«ドッペルさん ぷろろーぐ２.»

プロローグ２。

うん。おれがんばってる。

「…なんだこれは。」
朝、登校したら下駄箱に手紙が入っていた。
宛名は書いてない。
ただ『桐生はじめ様』と書かれているだけだった。
「…気持ち悪っ！…」
鞄に手紙を押し込み、上履きを取る。

間

「小林さん、明智さん！お昼いいかな！」
「うわぉ！き、桐生ちゃん！も、もちろん！ささ、どうぞ！」
「ヒロ驚きすぎ。」
「えーと…あのさ、こんな手紙が私の所に来ました。」
早速本題に入る。
「それって…アレ？」
「こ、恋文？」
「言い方が古いよヒロ。」
この会話はコントか。
「まだ中身は見てません。怖いので一緒に見てくれますか。」
「いいよ。あたしらでよかったら～。」
「うん。あとため口でいいよ？」
「は、はぁ…じゃ、じゃあ、開封！」
封を切り中身を開く。
「…なんだこれ…」
「え？何？」
『桐生はじめ様
私は貴方です。
７日以内に貴方に会いに行きます。
ドッペルより』
「…ドッペルさんだ…」
真剣な顔付きになる小林。
「え？何？ドッペルさんって…」
「桐生さん知らないの？」
心配そうな顔で問う明智。
頷く私。
「…ドッペルさんっていうのはね、ネット上のどこかにあるサイトのことなの。
そのサイトを見つけると画面が真っ青になって消えちゃうんだけど、そのあとこ
の桐生ちゃんがもらった手紙が来て、その手紙を受け取った人は７日以内に死ん
じゃうんだって…」
…ん？死んじゃうってことしか分からないぞ？
首を傾げる私。
「ごめん、ヒロ説明苦手なの。でも、死んじゃうってこと。」
「嘘だぁ。どうせこの世のカスどもが考えた嘘話しでしょう。」
「１９９４年３月１７日　ドッペルを名乗る大量殺人鬼現る。」
！？
「ひ、東…君？」
目を丸くする明智さん。
そこにいたのは新聞部の東亮平でした。
「何さっきの！何！」
ぴょんぴょん跳ねるヒロ。
「新聞記事を読み上げただけだ。」
腕組みをしつつ人差し指で眼鏡を上げる。
「…新聞記事？新聞無いよね。」
「甘いな明智。俺は興味がある新聞記事は全てノートに貼っているんだ。」
机の上のノートを見せる。
でもそんなことはどうでもいい。
「東！ドッペルの記事全部見せて！」
「食いついたな桐生。ちょっと待ってろ。」
席を立ち、ロッカーを開ける。あ、なんかたくさんノート持って来た。四次元ロ
ッカーか。
机にノートを置き、分別を始める。
「…ひ、東？」
「今日の帰りまでには渡す。どうせ今日部活は休みだろ。」
「なんだお前は。」
まぁ、確かに金曜は部活が休みだ。

放課後。

「東！分別は！」
「…ん？なんの事だ。」
「ドッペル！殴られたいか！」
「…忘れてた。あと３分の２くらいある。…おい、今日中じゃないといけないか
？」
「そりゃあな！土曜は学校が休みだ。」
「…はぁ…着いてこい。どうせ暇だろ。」
鞄とサブバックを片手に教室を出ようとする。
「教室でやればいいじゃん！」
「ばかが。４時には完全下校だ。」
「聞いてない！あ、こら待て！」


間


東に着いて行くと路地を大分外れたところに出た。
「着いた。ここだ。」
さびれた看板に右読みで『新帝国喫茶』と書いてある喫茶店だった。
「し、新帝国喫茶？」
「いいから行く。」
ドアを開けるとカランカランと安っぽいベルの音がした。
中には店員が一人しかいなかった。
「紅茶２つ下さい。」
「はい。」
手慣れた口調で注文をする。え？おごり？
「ぼーっとしてないで席着け。」
「あ、あぁ。」
１番奥の窓際から東が声をかけた。駆け寄る私。
「なんか適当に勉強でもしてろ。４５分で終らせて見せる。」
「お待たせしました。」
さっきの人が紅茶を２杯持ってやってきた。
「あ、ありがとうございます。」
「いえ。お嬢さん、音楽はよく聞かれるんですか？」
「は？」
「いや、ここには蓄音機があるのでお嬢さんの好きな曲でもと思いまして。流行
りの曲はありませんがね。」
「クラシックが、クラシックがいいです。」
「おや！若いのにすごいなぁ！では、私のオススメをおかけしましょうか。」
「ぜ、ぜひ、お願いします。」
軽く一礼して裏に引っ込む店員さん。
しばらくするとローテンポの落ち着いた曲が流れた。
…落ち着く。

ドアから安っぽいベルの音が聞こえた。
お客さんか。
「おかえり。」
「ただいま…ん？」
聞き覚えのある声。
振り向くと
「て、手塚さん！」
「桐生！」